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気候変動の取り組み(TCFD)

TCFDへの対応

当社は、2022年度からTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の観点から、気候変動が事業に与えるリスクと機会に関して、情報を開示する取り組みを実施しています。
2023年度は、ライフライン事業および機械システム事業の2つのセグメントを、2024年度は、産業建設資材事業セグメントを追加し、気候変動が各事業セグメントに与えるリスクと機会に関して、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標及び目標の観点で分析した結果について情報開示しています。

TCFD対照表

ガバナンス体制

当社は、サステナブルな社会の実現に貢献するため、サステナビリティ推進室が事務局となりCSR委員会を年2回、CSR推進会議を年4回の頻度で開催しています。
まず、CSR推進会議では、気候変動をはじめとするESGの諸課題の解決に資する情報共有、新たな方針の検討、具体的な活動の企画提案と実践に向けた計画立案などを行います。CSR委員会は、CSR推進会議で意見集約から提案されたサステナビリティに関する実践結果や企画や実践内容について協議や審議を行います。決定した事項は取締役会で決議され、グループ全体の経営に反映されます。

サステナビリティ推進体制図

企業のサステナビリティとコンプライアンス体制を示す組織図。CSR委員会とコンプライアンス・リスクマネジメント委員会は取締役会に報告を行い、取締役会が内容を監督する。CSR委員会は方針・方策をCSR推進会議に示し、報告・具申を受ける。コンプライアンス・リスクマネジメント委員会は4つの部会(コンプライアンス教育、リスクマネジメント、情報セキュリティ、建設業法順守)を管轄する

戦略

気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しています。シナリオ分析結果につきましては次の表「シナリオ分析結果」をご覧ください。2021年度には、カーボンフリー電力への切り換えやバイオ燃料の使用に関する件、GHG排出量削減に寄与する生産体制の件が取締役会にて議論され、2030年度に温室効果ガス(GHG)排出量を2013年度比で50%削減するという目標を決め、2050年カーボンニュートラルへの挑戦に向けて取り組みを推進しています。

シナリオ分析結果

気候関連問題による影響
(リスク・機会)
想定される事象 重要度評価 当社の主な対応策
1.5℃
シナリオ
4℃
シナリオ
脱炭素社会への移行に伴う影響 リスク 炭素税と排出権取引 全セグメント
温室効果ガスの排出量に応じた課税コストや排出権取引コストの発生
  • GHG排出量見える化とScope1、2削減
  • 再エネ電力、ICPの導入
  • 生産設備の省エネ化と生産合理化
化石燃料の使用に関する規制

ライフライン
鉄管(水道管)製造において、化石燃料から代替燃料化によるコスト増加

機械システム
石油化学、鉄鋼市場分野の需要低迷による売上減少

産業建設資材
現場環境改善に使用する化石燃料から代替燃料化によるコスト増加

  • 化石燃料からバイオマス固体燃料化や電気エネルギー化など非化石燃料への転換
  • 化石燃料使用量の低減
  • 脱炭素転換による各市場動向把握
プラスチック規制
リサイクル規制

機械システム
プラスチック使用量の低迷に伴うプラスチック製造機械需要の売上減少

産業建設資材
FRP管などの需要低迷による売上の減少

  • プラスチックのリサイクル化、サーキュラーエコノミー化の推進
再エネ・省エネ
政策の導入

全セグメント
再エネ導入による電力コストの増加

全セグメント
省エネ設備機器への更新に伴う設備コストの増加

  • 生産設備最適化による生産効率化
  • PPAの導入
エネルギーミックスによる変化

機械システム
石炭火力発電関連製品の需要低迷による売上の減少

  • 気候変動対策と市場変化の見極め
原材料コストの変化

ライフライン
鉄管(水道管)製造に使用する化石燃料価格の変動、原材料となる鋼材や合金価格の高騰

機械システム
原材料となる鋼材や合金価格の高騰

産業建設資材
金属製ダクトに使用する鋼板価格の高騰、 プラスチック原料の高騰

  • 原材料の使用量低減
  • 原材料調達ルートの多様化
  • 代替品の検討
商品の需要変化

全セグメント
脱炭素製品への需要シフトにより原材料や設備切り替えコストが増加

  • バリューチェーンマネジメントの強化
  • 販売製品の省エネ化
顧客・投資家の評判変化

全セグメント
環境への取り組みが消極的な場合、取引先候補から除外され売上が減少、ダイベストメント化による資金調達の減少

  • 脱炭素製品化の推進
  • 社会課題を見すえた顧客需要の創造
機会 リサイクル規制

機械システム
リサイクル事業関連製品需要の高まりによる 売上の増加

  • 循環型に貢献できる製品へのシフト
再エネ・省エネ政策の導入

全セグメント
再エネ普及に伴う関連製品需要の高まりによる売上の増加

  • 再エネ、省エネ関連製品の拡販 (バイオマス、風力、EV、二次電池、水力、原子力、太陽光向け製品)
情報開示の対応

全セグメント
環境への積極的な取組の開示により、新たな顧客獲得や投融資機会が増加

  • TCFD、CDPの情報開示と開示内容の改善
  • 統合報告書による情報開示
  • サステナビリティ情報の開示
商品の需要変化

全セグメント
環境への取り組みが積極的な場合、企業イメージの向上につながり売上が増加

  • (産業建設資材)ZEB市場の模索、低炭素鋼材ダクト化への移行
  • (全セグメント)環境関連製品の開発と拡販
顧客・投資家の評判変化

全社
環境に対する積極的な取組開示により、新たな顧客獲得や投融資機会が増加

  • 脱炭素製品化の推進
  • 社会課題を見すえた顧客需要の創造
  • ESG評価の導入による課題抽出
気候変動による物理的な影響 リスク 異常気象の激甚化

全セグメント
当社設備およびサプライチェーン上の設備の被災による納期遅延・工期遅延・代替品確保等の対応コストが発生、顧客が被災することで売上が減少

  • 当社BCP対応の整備
平均気温の上昇

全セグメント
夏季空調費の増加、社員の猛暑対策コストの増加

  • 空調機器の更なる省エネ化の推進と適切な温度設定
労働条件の悪化
労働法制の強化

全セグメント
猛暑により労働生産性が低下し収益性が悪化、労働法制強化による労働環境改善が必要

  • 職場環境の改善に資する設備投資
  • 健康経営優良法人(大規模法人部門)の継続的な認定取得
  • 自動化、AI化、ミニマムメンテ化
機会 異常気象の激甚化

ライフライン
送水網の拡張による鉄管需要の増加

産業建設資材
災害対策のため、防災関連製品および改築工事需要の増加、国土強靭化に伴うコンクリート構造物の修復や補強需要が増加

  • 災害対応、国土強靭化に係る製品の拡販

代表的なリスク・機会

炭素税と排出権取引(リスク)

当社では、温室効果ガスの排出量に応じた課税コストや排出権取引コストの発生が将来的にリスクとして財務的インパクトが大きくなるためScope1,2の削減を進めています。具体的には、ダクタイル鉄管の製造工程の集約・合理化や燃料として使用する石炭コークスを植物由来のバイオ燃料への変換、サーキュラーエコノミーの取り組みを推進しています。

ニュースリリース|CO2排出量削減とダクタイル鉄管の生産合理化に向けた設備投資を本格化

再エネ・省エネ政策の導入(リスク・機会)

当社では、リスクとして再エネ電力の導入による将来的なコストの増加、一方、機会として再エネ電力の普及にともなう当社関連製品の需要増加を見込んでいます。再エネ電力の導入(リスク)は、2022年度から電気事業者が提供する再エネ電力を導入し、再エネ電力比率 93.2%、CO2排出削減量 約15,300(t-CO2)となりました(2023年度実績)。今後、設備更新時の省エネ設備への促進とともに生産性の向上に努め省エネ化への取組を進めています。一方、再エネ電力の需要増加(機会)に伴い、特に水力発電に関連する製品の需要の増加を見込んでいます。

原材料コストの変化(リスク)

当社は、主力の水道管、産業機械、樹脂管、鉄製ダクトなど、モノづくり工程で様々な燃料や原材料を使用しており、資源の枯渇や化石燃料由来の燃料の変換にともなう高騰がリスクとして想定されます。今後、生産活動において燃料の変換や原材料の使用量低減、サーキュラーエコノミーによる資源循環を促進します。

シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ

気候変動による当社事業セグメントへの影響を明らかにするために、「気候変動対応への積極的な政策・法規制により気温上昇が抑えられる1.5℃シナリオ」と「消極的な対応により気候変動が進む4℃シナリオ」の2つの気候変動シナリオを用いて分析を実施しました。
各シナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が報告しているRCPシナリオを参考に気候変動による物理リスク(物理的な影響)の分析を行い、また、IEA(国際エネルギー機関)が報告しているNZE、SDS、STEPSシナリオを参考に移行リスク(脱炭素経済への移行に伴う影響)の分析を行いました。また、対象の時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するためにマイルストーンとしている2030年に設定しました。
さらに、従来の財務項目と比較する際に気候変動がもたらす影響度を把握するため、試算可能な項目について財務的な影響額を試算しました。なお、財務的影響額のリスクを最大化するために各拠点の資産額を「簿価」から「取得時金額」に変更し試算を行いました。

世界観 政策により気温上昇が抑えられる世界 気温上昇・気候変動が進む世界
1.5℃シナリオ 4℃シナリオ
概要 2100年の気温上昇が19世紀後半から1.5℃に抑えられるシナリオ。規制強化により炭素税など移行リスクの影響を受ける。物理リスクの影響は4℃シナリオに比べ相対的に小さい。 2100年の気温上昇が19世紀後半から4℃上昇するシナリオ。 異常気象の激甚化など物理リスクの影響を受ける。気候変動に関する規制強化は行われないため、移行リスクの影響は小さい。
シナリオ 移行 IEA NZE・SDS IEA STEPS
物理 IPCC RCP 2.6 IPCC RCP 8.5

リスク管理

当社のリスクマネジメント規定に則り、各事業部および関係会社に関連するリスクを3年毎の頻度で特定を行い、リスクマネジメント部会にてリスクマトリクス一覧表を作成し、特定されたリスクは、リスクの種類を人的・物的・賠償・信用の4つに区分し、リスクの重大性(経営への影響度を含む)を3段階、リスクの発生頻度または可能性を4段階で評価しています。具体的には、リスクマトリクス一覧表は年に1回の頻度で見直され、その結果をコンプライアンス・リスクマネジメント委員会が検討・承認を行っています。
評価されたリスクを管理するために、対応策を検討し実行する専門部会を設置するとともに、委員会・専門部会での検討事項を社員へ周知し、取り組みを推進・実行しています。以上のリスクマネジメント体制により、当社の事業に重大な影響を与えうるリスクが発見・特定され、経営計画に反映されています。

指標と目標

CO2排出量の2022年度実績と削減目標(Scope1+2)[t-CO2]
CO2排出量の2022年度実績と削減目標(Scope1+Scope2)のグラフ。2013年を基準として、2022年度実績で45.5%削減を達成。2030年度目標50%削減と2050年度目標カーボンニュートラルを目指す。

サプライチェーン全体でのCO2排出量の把握と削減に向けてScope3の算定を2023年度に開始しました。
2022年度実績は、再生可能エネルギー由来電力の導入などの効果により2013年度比45.5%のCO2排出量削減となりました。
2024年度には、当社グループ全体でのScope1,2,3のCO2排出量の把握とシナリオ分析結果に示す対応策によりCO2排出量の削減に向けた取り組みを推進してまいります。