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「統合報告書2025」第三者意見

関西学院大学商学部教授・博士(商学)
阪 智香 様

現在、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)委員、金融庁金融審議会専門委員、金融庁企業会計審議会委員、日本学術会議連携会員、日本公認会計士協会サステナビリティ能力開発協議会委員・継続的専門研修制度協議会IES検討専門委員会専門委員、日本社会関連会計学会副会長、日本経済会計学会理事、国際会計研究学会理事、日本会計研究学会評議員などを務める。

クリモトグループの統合報告書2025は、「三方よし」に「未来」を加えた「四方よし」の精神を軸に、事業活動と社会価値の両立を目指し、「2030年にありたい姿」に向けた価値創造ストーリーを中心に構成されています。

  1. リスク・機会およびマテリアリティと連動した施策

    サステナビリティ関連のリスクと機会については、地球温暖化や労働人口減少といった社会課題を起点に、事業領域別に整理されています。例えば、リスクとして製鉄・火力発電等の需要減少、機会として老朽インフラ再整備ニーズの拡大などを識別しています。これらを踏まえてESG別に重要課題(マテリアリティ)を特定し、中期3ヵ年経営計画(2024~2026年度)と連動させ、サステナビリティ課題が事業構造改革や資本コスト経営と一体的に語られています。

  2. コア・コンテンツに沿った開示

    脱炭素の取り組みは、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つのコア・コンテンツに沿って開示されています。「戦略」では1.5℃・4℃シナリオ分析を通じて財務的影響と対応策を明示し、「リスク管理」では影響度と発生可能性に基づく優先順位付けが行われています。「指標と目標」ではGHG排出量削減の目標と進捗、ロードマップが示され、「ガバナンス」では取締役のスキルやマイパーパスなどの開示を通じて、経営層の積極的な関与が示されています。

  3. レジリエントなビジネスモデルと企業価値向上の可視化に向けて

    本報告書からは、「世の人々にあまねく衛生的で綺麗な水を届けたい」という創業者の想いを大切にしつつ、サステナビリティを経営の中核課題として捉える姿勢が読み取れます。水道の老朽化という社会的危機に直面し、国策インフラ投資や下水道更新ニーズが高まる中、老朽管の更新・耐震化を、脱炭素化(バイオコークス転換)やサーキュラーエコノミー(水道管の水平リサイクル)と結び付け、バリューチェーンで共同しながら推進している点は、レジリエントな社会インフラと事業成長の両立を示す好例です。こうした取り組みは収益性の向上を通じて株価やPBRの大幅な上昇にも反映されています。

    今後は、財務とサステナビリティの統合思考のもと、サステナビリティ関連のリスクと機会への対応が、中長期的なビジネスモデルや将来キャッシュ・フロー、資本コスト、成長率にどのような影響を与えるのかを、より明確に示すことが求められます。現状では、取り組みの説明はなされているものの、それらが将来の収益力や資本効率の向上にどのようにつながるのかという経営上の核心との結び付きは、必ずしも十分とはいえません。また、これらを実現する人的資本戦略との連関についても、より具体化が必要です。サステナビリティを担う人材の育成や評価制度が、財務目標やKPIとどのように結び付いているのかを示すことが、統合思考を実質化する鍵となります。

    サステナビリティを会計と結び付け、経営資源配分や事業選択に反映させていく姿勢を明確にすることで、同社のビジネスモデルはよりレジリエントで持続的なものへと進化していくことが期待されます。